噛んで服用

覚え書き

初めてのわーすたと螺旋階段の話

二日酔いからくる歯茎に麻酔を打たれたような猛烈な顔面の痺れを抱えながら『The World Standard 〜夢があるからついてきてね〜』に入ってきた。呼ばれたので。

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失礼ながらメンバーの名前も把握していないくらい何も知らない状態で入ってしまったのだけど、とにかくめちゃくちゃ楽しかった。ふたつ返事で取りにいったチケットに(猫耳付き)と印字されていた時点で4月22日が最高の音楽だと決定づけられていた気すらする。だって鼓膜が4つになるから。ありがとうわーすた。ありがとうみんな。これはしあわせだ。

フルバンドワンマンと銘打ったこのライブにわーすたが何を懸けていたのか、なんとなくは感じつつ、やっぱりよくはわからず、そもそも「わーすた」というだけで頭がいっぱいいっぱいのからっぽ。それでも思ったこと、ようやく立ち上がってきた鮮明なイメージがあるので、病み上がりの薬指でザッと書いてみる。

 

 

ここにいる意味を強烈に感じた瞬間はふたつ

ひとつが『ぱわわわわん!!! パワーパフ ガールズ』の5回目のP。単純にああいった音が大好きだしフリも可愛くわかりやすいので、気が付けばみんなと一緒に腕を突き上げ飛び跳ねていた。これがわーすた楽曲への初めての完全なる没入。本当に楽しかった。後になってセットリストからの切られやすさやDJとして出てきた鈴木まなかさんの話を聞いて、より一層、ここで聴けて良かったな、の思いが強くなった。きっかけという大切さをぎゅっと込めてしまうであろう“I just wanna be with you”。

もうひとつがアコースティックに切り替わって一発目の新曲『ねぇ愛してみて』のコーラス。ここで初めてわーすたのハーモニーを認識した。それは小学校の夏休み、家族で遊びにいったプールに差し込む柔らかな陽の光、そんなたおやかさでこの身を包んでくるので、ゆったりとまぶたを閉じてしまった。実質どれも新曲だから新曲だという先入観なしに受け止められるみたいな謎の遠回りバイアスも加わって、たぶんこれから大好きになる。改めて聴いて「君のママと君のパパが出会った奇跡」と歌っていたことを知った。ヤバいでしょ。

どの瞬間にも一緒に口ずさみたくなるようなうれしさがあった。ウワサのハンブンコもさせてもらっちゃった。ただただ楽しかった空間が今になって暖かさをふわりと運んできた。わーすたが持つのは和としての“with”。

 

 

Just be yourselfは螺旋階段

Just be yourselfを聴くたびにわーすたの5人が楽しそうな笑顔でどこまでも螺旋階段を昇っていくイメージが鮮明に浮かび上がってくるようになった。ワイワイみんなで一緒に。ときには踏み締めた数を覗き込んで。

ぴかぴか ゆらゆら 未来へ歩く“今日”は 繰り返しのフリしている夢への道 ー Just be yourself

螺旋階段を上昇する点の平面図上での動きはまさに時計の秒針のように同じところをグルグルと循環する。その捉え方しか知らなければ停滞を感じて不安になるし、閉塞感に悩むことだってあるかもしれない。それでも、視座を少しでもずらすことができたとき、その循環が閉じてはいなくて、緩やかに上へ伸びていることに気付く。世界が立ち上がって光が射し込んでくるような、そんな認識の転換への示唆を、この音楽はもたらしてくれるのだと思う。幸せか不幸かを決めるのは自分なので。

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螺旋階段の魅力には、揺るぎない支柱ひとつを中心として回転しながら上昇する構造に周囲を巻き込んでいくイメージが湧くこと、限られた土地からでも高くこの身を運んでいけること、中心からの距離で踏面の幅が変わる楽しさなどが思いつくのだけど、わーすたを知って気付いたのは、踏み込むたびに新たな接線方向に視野が開いていくということ。これこそが“The World Standard”だったりしないかな。

 

 

 

となりにいたおじさん、ずっとスマホで撮影していたので最後の楽しくみんなで繋がるやつが自分の腕で途切れてしまった。それが許されている環境だということはわかる。だからこそ、わーすたに見たい光景が生まれた。いつかみんなでどこまでも!

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あ〜!わーしっぷかな〜〜〜!!!

 

オールタイムベストの話

大学を卒業した。もういくつか寝ると朝から通勤電車に揺られているらしい。それについては心から無理なのだけど、誰にでも訪れるこの節目を口実に何かしら振り返りたいな、とも思った。であればやはり映画について。

 

もともと映画が身近な環境ではあったのだが、映画を観ることそのものが好きになったのは高校3年生の冬に観た『グラン・ブルー』がきっかけだった。わけがわからないな、すごいな、映画っていいな、最初は本当にそんな感じでのめり込んでいった。気が付けばツタヤでアルバイトを始めていた。

自宅観賞ばかりだった1年間に、映画に対する意識がガラリと変わるような衝撃を運んできたのが『ゼロ・グラビティ』だった。確かやっと3Dが世間的に浸透し始めた頃だった気がするのだが、そもそも劇場から遠退いていた身からしてみれば、明転後にどうしても立てなくなるあの感覚で、映画とは体験なんだと深く刻み込まれた驚きを昨日のことように覚えている。 

難関のドキドキひとり映画初挑戦を『アナと雪の女王』で乗り切ってからというもの劇場に足繁く通うようになった。拳を突き上げて叫びたくなる映画、涙を流して抱きしめたくなる映画、なんだかとても死にたくなる映画など、年間何百本も観るほどの勢いではなかったが、改めて観たものも含めこの約4年間でたくさんの素敵な映画と出会うことができた。やっぱり映画が好きだな。

 

もちろん上記の映画たちがきっかけとしてとても大切なことは間違いないが、記憶を整理していくとより深く意識に根を張った映画があることに気付く。そこで、今まで積み重ねてきた中からオールタイムベストを10本にまとめてみたい。突き詰めていくと「映画が好きだ」という自負を揺るがないものにできそうだ。それでは今この瞬間のオールタイムベストにいってみよう!

 

 

ローグ・ワン(2016)

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フォースの覚醒で初めてあの熱狂の渦に飲み込まれて、やっとこの世界に踏み込むことができたと心の底から感激し尽くしたのだけど、翌年にこんなにも切なく力強く銀河の根幹を担う物語が描かれるとは思わなかった。英雄が英雄として語り継がれていく裏には数え切れないほどの名もなき戦士たちの志と死があるということ、仲間を信じて必死に繋げた小さな小さな希望の種はきっと遠くの誰かに届いて咲き誇るということ、この意味をスター・ウォーズという現代に描かれる一大英雄史が改めて示してくれたからこそ涙が溢れて止まらなかった。

 

 

⑨エイリアンvsプレデター(2004)

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なんだかとても大好きな映画で小学生の頃から何度も何度も観ているのだけど、興奮が尽きたことはないし今後も尽きるとは考えられない。例えば最近だとアベンジャーズに感じるような「映画ってすごい!!!」という驚きの原体験がこれからも延々とこの中で暴れまわり続けるのだと思う。エイリアンもプレデターもそれなりに好きかなという程度の思い入れの深さなのだが、両者が戦うことで愛が掛け合わされて遥か彼方に飛んでいくような、そんな打ち上げお祭り騒ぎ。ああいうオチは子供の考える夢の実現のような感触があって最高に好き。

 

 

コンスタンティン(2005)

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めちゃくちゃ格好良い映画なのでめちゃくちゃ格好良いところを挙げていくと、地獄に蠢く悪魔がめちゃくちゃ格好良くて、悪魔を蹴散らしていくための武器や小道具がめちゃくちゃ格好良くて、悪魔を素手でぶん殴るのがめちゃくちゃ格好良くて、ティルダ・ガブリエルの謎のジーンズ姿がめちゃくちゃ格好良くて、地上に降り立つ地獄の帝王サタンの白スーツがめちゃくちゃ格好良くて、天国に導かれながら中指を立てるエクソシストがめちゃくちゃ格好良い。ここにある学びは自己犠牲と禁煙の大切さ。死にたくなければガムを噛め。

 

 

魔法にかけられて(2008)

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まずアラン・メンケンの音楽が最高。アニメーションの中で生きるプリンセスが魔女の策略で現代のニューヨークに飛ばされてしまうわけだけど、あちらにとっての現実とこちらにとっての現実の擦り合わせが可愛くぶっ飛んでいて楽しい。クレジットカードでお買い物するシーンが本当に可愛くて大好き。そしてなによりこういう表現によって非現実の中で活躍するキャラクターたちの生活が物語の向こう側に想像として膨らんでいく。この感覚こそが生きていく上で大事に培っていきたいものなのかなと思う。ただ、よく考えるとこれはなかなかエグみのある話で、捉え方によってはある種のホラーですらあるのだが、それも含めて正統派へのディズニー自らのカウンターだと考えるとやっぱり面白い。

 

 

ヒックとドラゴン(2010)

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キッズアニメーションでありながら相互理解や寛容性を包括的なテーマとしつつ正義を振りかざすことで生じる矛盾と代償も描かれている。子供の頃からこの作品に触れることができていたらどんなに幸せだっただろうかと思う。実際に深く理解できるかはわからないけれど、こういった優しさへのヒントを今の子供たちが感覚的に受け取ることができるのは本当に喜ばしいことなのでドラゴンと友達になることを夢見て健やかに育って欲しい。あんなに懐っこいドラゴンが息を飲むほど大迫力の滑空やバトルを繰り広げるのは底抜けに爽快だし、グリーン・デスへと立ち向かうヒックとトゥースの背中にアスティが呟く「Go…」が祈るように優しくていつも泣いてしまう。

 

 

⑤WE ARE YOUR FRIENDS(2016)

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EDMのDJが現実との折り合いに葛藤しながら夢の舞台を目指す。このような物語で描かれる「仲間」は往々にして毎晩クラブで一緒に遊びまわることを筆頭に関係の深い人間のことを指し、宣伝もそのようなニュアンスで打たれていたのだけど、いざ蓋を開けてみると違った。タイトルでもある「ウィー・アー・ユア・フレンズ」とは、音楽が届くすべての範囲の人間を指している。さらに、ここで「じぶんのしるし」として奏でられた音楽は仲間からの承認であり、仲間との約束であり、仲間への弔歌であるように感じられる。優しさに溢れている。やっとそういった音楽のあり方を感じられるようになってきた身にとってはラストのライブが刺さりに刺さってかなりブワッと来た。あとエミリー・タラコウスキーがめちゃくちゃ可愛くてめちゃくちゃエロくて最高。

 

 

ちはやふる(2016)

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当たり前のように上の句と下の句を分けて考えることができない甘えを発揮してしまうが、繋がるということの無限の拡がりはそれほど強いということで。本当にどちらも比べられないくらい大切に思う。31音で構成された和歌が立ち上げる情景にそれぞれがそれぞれの想いを馳せるわけだけど、それを例えば「せをはやみ」の5音で他者に伝えることができるようなある種の秘密の共有がここにはある。その輪を外へ外へと開いていこうとする熱がかるたに乗って人から人へと受け渡されていく。この生活は想像もつかないような遠くの誰かの優しさに支えられているんだと気付いてしまったら、どうしたってひとりになんてなれない。この映画に触れるとそんな感覚が芽生えてくる。はじけにはじけた青春は閃光。

 

 

③BFG(2016)

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この映画は真正面から優しく優しく物語の役割を説いてくれていて、それはまさに自分がたくさん映画を観て、このように言葉で整理している理由でもある。この物語そのものが最後に起き上がったソフィの夢だったのではないかというような面倒臭い解釈をしてしまったりもするのだけれど、そこでBFGが実在するか否かはたいした問題ではなくて、たおやかな朝に窓から呼びかけたらいつでも遠くから聞いてくれていると信じられること、それこそが楽しく生きていく上で大切なことなんだろうなと思う。まぶたを閉じると広がる想像はいつだって優しくて、いつまでも浸ってはいられなくて、いつかは開かなければいけなくて、だからこそここで必要になるものが、創造を詰め込むための瓶。

 

 

②大人ドロップ(2010)

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本当に最高に心から大好きな青春群像劇。子供と大人の狭間でモヤモヤを抱えながら過ごす4人の高校生の最後の夏休み。はやく大人になりたい子、大人が何かわからない子、大人になることを強いられる子、素直に目の前のことに取り組む子。お互いがお互いの「大人」をぶつけ合いながら、その痛さに気付くと頭から布団に潜りたくなるようなムズ痒さが懐かしくて切なくて心地良い。とにかく醸し出される空気が澄み切っている。「まずは足元を見てごらんよ」という印象的な台詞があるのだけれど、これは明確な感情を掘り当てるためにとても大切なおまじないであり、自己の確立にも繋がっていく。肝油ドロップのグニュっとシャリっとした噛み心地に爽やかな甘酸っぱさと後から優しく広がる甘さ、これそのものが大人ドロップ。

 

 

①スポンジ・ボブ ザ・ムービー(2004)

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スポンジ・ボブはめちゃくちゃ楽しくてめちゃくちゃ可愛くてめちゃくちゃグロくてめちゃくちゃ笑える本当に最高なキャラクターで、ポジティブなんて言葉をブチ破る快活さでいつも楽しく暮らしてるわけだけど、なんというかとても優しくて、他者のミスはおろか悪意すら包み込んでケラケラ笑い飛ばしてくれる。見ているだけで心が安らぐ。この劇中でグーフィー・グーバーの歌というわけのわからない歌が歌われるのだけど、口ずさむだけで元気が湧いてくるから毎日をぶちアゲていきたいあなたにオススメ。スポンジ・ボブは本当に本当に本当に最高だなあ。

 

 

☆モアナと伝説の海

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観たばかりなのだが生涯かけて抱きしめていく作品であることは間違いないのでプラスワンで書くことにする。ここには歴史を学ぶことの本質的な意味が描かれているように思う。それはこの映画のコンセプトである「自分の山を知れ」が端的に表してくれている、無限に続く時間的な連なりの中に自分を打ち付けていく感覚、とても大きな流れの中のとても小さな一員であると気付く感覚、何もかもが根底で繋がって見えてくる感覚のようなもので、得ることで生きていくための選択肢がどんどん増えていくし、選択のひとつひとつに実感が伴うようになる。語り継がれていくおじいちゃんおばあちゃんやそのもっとご先祖の生き様に触れると自分がどの道を進むべきなのか責任を持って選ぶためのヒントが掴めるので、人間の最も凄いところは、既にここにはいない誰かを規範に自己承認が得られることなのかな、と思う。そしてそれはいつもそばで見守ってくれている海や空からでさえも得ることができる。すごい。

   

 

 

こう振り返ってみると、どれもだいぶ似通った語り口にみえる。物語を重視する傾向が強く、無限の広がりの中の自己を想像させてくれるものに胸を打たれやすいらしい。また、最近公開された映画が多いのはやっと受け取りたいことが明確になり生活の各所と繋がるようになり始めたからだろうか。こうなると過去作を改めて見返すだけで新たに気付くことがたくさんありそうだ。明確な好みがあるとしてあまり観たことのないジャンルも多々あるので、新たな驚きを見つけるためには未知の領域に積極的に踏み込んでいくことも怠ってはいけないな、とも思っている。自己分析おわり。

 

初めてブログを書いてみた。時間はかかるが考えをまとめてカタチにしていくのはやっぱり楽しい。年相応に文章を上手く書けるようになりたいし、好き勝手に書ける心地良さも感じたので、今後もここで何かしら書いていけたらいいな。

 

人生ここからが長いのかあっという間なのかはわからないけれど、できれば程よく過ぎてほしいし、明日の時点で既に変わっているくらいにオールタイムベストは今後もどんどん更新されていってほしいし、そう考えると新生活がワクワクしてきたので、もっともっと素敵な映画に出会えますように!

 

とにかく新年度お馴染みの自己紹介では自信を持ってどんどん「映画が好きです」と言うから〜〜〜!!!